海の底から司法試験

都内大学生による司法試験合格に向けた勉強の備忘録

令和元年予備試験刑実 再現答案

1.  設問1
(1)  「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」かどうかは、罪証隠滅の客観的可能性と主観的可能性から判断すべきと考える。
(2)  そして、Aは接見したものに頼んで、V,W,Bに圧力を加えて証言を変えさせることが考えられる。しかし、AはV,Wと面識がないため、V,Wの居所を特定することが困難であるから、罪証隠滅の客観的可能性が認められない。他方で、Bは勾留されているから、Aは接見した者をBと接見させて、圧力を加えたり口裏合わせをしたりすることによって、罪証隠滅をする客観的可能性が認められる。
 また、Aは被疑事実を否認している(証拠⑧)。さらに、Aは執行猶予中であるから、有罪になれば実刑に処される可能性が高いため、かかる不利益を免れるために罪証隠滅をする主観的可能性が認められる。
(3)  したがって、Aには「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」といえる。
2.  設問2
(1)  直接証拠とは、推認の過程を経ずに犯罪事実の存在を認定できる証拠をいう。そして、目撃供述が直接証拠にあたるためには、その供述が犯行状況を含み、被疑者と犯人の同一性を認定できるものである必要がある。
 まず、Wの供述はVに暴行が加えられるという犯行状況を目撃している。次に、Aについては、黒色のキャップの男はキャップのつばが影になって見えないと供述しており、Aとキャップの男の同一性について供述していない。そのため、Aについては、Wの供述録取書は推認過程を経なければAの犯罪事実の存在を認定できないので、直接証拠にならない。そして、Bについては、街灯の明かりで顔を目撃しており、犯人選別手続においてBとの同一性を確認している。そのため、Bについては、Wの供述録取書は推認の過程を経ずにBの犯罪事実の存在を認定できるので直接証拠となる。
(2)  まず、証拠⑥よりAが黒色キャップや両腕にアルファベットが描かれた赤色のジャンパーを所有しているという事実が認定できる。次に、証拠⑤より、Aが黒色キャップと上記ジャンパーを身につけて、犯行のあった平成31年2月1日午前1時の直前に、犯行現場から約100メートルしか離れていないコンビニを訪れているという事実が認定できる。かかる事実と、Wの供述録取書からAと同じ特徴を持つ服装をした男がVに暴行を及ぼしたという事実が認定でき、かかる事実からAがVに暴行をしたという事実が推定される。
3.  設問3
(1)  「傘の先端でその腹部を2回ついた」という事実についての主張
  Aの傘がVにあたったのは2回ではなく1回にとどまる上、その1回も振り返った際に偶然に当たっただけであり、Vの障害結果につき認識も認容もなかったといえる。そのため、Aには故意(刑法38条1項)が認められない。
(2)  「足でその腹部及び脇腹等の上半身を多数回蹴る暴行を加え」たという事実についての主張
 AがVを蹴ったのは、Vが拳骨で殴り掛かってきたからであり、それが多数回に及んだのもVがAの肩をつかんで離さなかったからである。そのため、AがVを蹴ったことには正当防衛(同36条1項)が成立し、違法性が阻却される。
4.  設問4
 Aの弁護人はAの自白を聞いたにもかかわらず、冒頭手続において無罪の主張をしているところ、かかる主張は真実義務(弁護士職務基本規程5条)に反するとも思える。
 しかし、刑事弁護においては弁護人は被告人の権利及び利益のために最善の弁護活動に努める必要がある(同46条)。そこで、弁護人が負うのは、被告人に不利な事実を明らかにするという積極的真実義務ではなく、積極的に証拠隠滅等に関与してはならないという消極的真実義務であると考える。そして、Aの弁護人は無罪主張をするのみで証拠隠滅等をしているわけではないため、真実義務に違反しているとはいえない。
5.  設問5
(1)  検察官はBの公判における公判調書を証拠調べ請求(刑事訴訟法298条1項)をすることが考えられる。
(2)  上記公判調書はAの公判期日外における供述を内容とする証拠であり、内容の真実性が問題となるため、伝聞証拠にあたり、弁護人の同意(同326条1項)もないから、証拠能力が認められない(同320条1項)のが原則である。
 そのため、検察官は上記公判調書は同321条1項1号により証拠能力が例外的に認められると主張すべきである。そして、BはAの公判の証人尋問において、Aが何をしていたのかは見ていないとの証言をしているため、「前の供述と異なつた供述をした」といえる。そのため、上記公判調書は同号の要件を充足する。
(3)  したがって、検察官は上記対応をすべきである。
以上



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